試用期間と本採用拒否の可否

 多くの会社では、入社後の一定期間、「試用」ないし「見習い」期間とし、この期間中に正規従業員としての適格性を評価し、本採用(正社員)とするか否かを判断する制度をとっています。

 この場合、会社は、当該従業員を本採用しないことができるのでしょうか?

試用期間の法的性質

 試用期間中の労働契約は、採否決定までの段階では十分調査ができない資質、性格、能力について、さらに観察・調査をしたうえで、最終的な採否を決定するための解約権付きの労働契約であるとされています。最大判昭和48年12月12日・民集27巻11号1536頁(三菱樹脂事件)参照。

本採用拒否の適用性

 試用期間をめぐる紛争としては、主として、本採用拒否が適法か否かとして争われることになります。

 上記三菱樹脂事件では「企業者が、採用決定後における調査の結果により、または試用中の勤務状態等により、当初知ることができず、また知ることが期待できないような事実を知るに至った場合において、そのような事実に照らしその者を引き続き当該企業に雇傭しておくのが適当でないと判断することが、上記解約権留保の趣旨、目的に徴して、客観的に相当であると認められる場合には、さきに留保した解約権を行使することができるが、その程度に至らない場合には、これを行使することはできないと解すべきである。」とされています。

試用期間中の留保解約権の行使の有効性

 試用期間途中で、資質、性格、能力などについて極めて明確に不適格と判断できる事態が生じた場合には、例外的に留保解約権の行使ができるケースもあります。

 裁判例では、試用期間中の留保解約権の行使を不適法としたものもありますし(東京高判平成21年9月15日・労働判例990号153頁)、適法としたものもあります(大阪高判平成24年2月10・労働判例1045号5頁)。

 

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(弁護士 井上元)