所有権の範囲とは異なる意味の土地と土地の境目である公法上の境界は、その位置に争いがあるのであれば、筆界特定の制度を利用する手段もありますが、いきなり境界確定の訴えを提起する解決方法があります。また、まずは筆界特定制度を利用したうえで、不満があれば、境界確定の訴えを起こす方法もあります。なお、当事務所が活動する場合の費用については、土地の境界線の争いに関する弁護士費用のページをご覧ください。
1 境界確定の訴え
判決で公法上の境界を確定する訴訟で、請求棄却はありません。原則として判決で必ず境界が確定されます。離婚訴訟等と同じ、形式的形成訴訟の一種です。土地の所有権の範囲を確認する訴えとはまったく別の訴えです。
2 通常の民事訴訟とは異なる点
通常の民事訴訟と異なるのは、以下のようなものがあります。
①当事者の主張する境界線に裁判所は拘束されません。
②当事者の合意によって変更できず、裁判上の和解、請求の放棄や認諾もできません。
③当事者に立証責任はなく、裁判所は合理的な裁量で特定の位置を境界線と確定しないといけません。
3 費用
大まかに分けると二つです。
(1) 訴訟費用
訴訟上の各種申立てをする際に納付する手数料、証拠調べに要する費用などです。
(2) 弁護士費用
弁護士に依頼した場合にかかる費用です。具体的な額は、事務所によって異なります。本人訴訟でやれば原則かかりませんが、訴訟は複雑で失敗しないためにも、専門家である弁護士を使用したほうがいいでしょう。なお、裁判所からの付添い(民事訴訟法155条2項)が命ぜられたときは、本人訴訟ではじめても弁護士費用が発生することになります。
4 判決の効力
訴訟の当事者以外の第三者に対しても確定判決の効力は生じます。筆界特定制度の結果に優先します。ただし、筆界特定制度の結果は、訴訟で有力な資料になりますので、裁判所は、訴訟関係を明瞭にするため、登記官に対し、筆界特定手続き記録の送付を嘱託することができます。(弁護士中村友彦)