隣地との境界標を無断で撤去するとどうなるか

   隣地との境界について、隣地の所有者と意見が合わない場合があり、紛争になることがあります。公法上の境界であれ、私法上の境界であれ、法的な手続きをとることなく、自分の主張を押し通すことはできません。最終的な解決には、公法上の境界なら境界確定の訴え、私法上の境界であれば、所有権の確認の訴えなどをすることになります。

 紛争になっている土地に境界標が現存している場合、当該境界標に異議のある当事者にとっては、その存在は認められないものだと思いますが、法的な手続きをとらずに勝手に撤去すると刑事罰になることもあります。

 なお、土地の境界線の紛争に関して、当事務所が活動した場合の弁護士費用は土地の境界線の争いに関する弁護士費用(境界確定)のページをご覧ください。 

1 境界標

      境界標とは隣地との境界の境目を示すために設けられた物で、その材質に決まりはありません。石杭、鉄杭といった人工物が使用されたり、立木といった自然物を使用することもあります。

2 境界毀損罪

      刑法262条の2は、境界標を損壊・移動・除去等の方法で、土地の境界を認識できないようにした場合、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処すると規定しています。したがって、勝手に境界標を撤去すれば、刑事的な問題になりえます。

(1)土地の境界  

  境界損壊罪にいう土地の境界とは、公法上の境界だけでなく、所有権等の私法上の境界も意味します。境界は、法的に確定した場合でなく、事実上境界とされている場合を含みます。

(2)土地の境界を認識できない

   境界標を損壊しても、境界が不明にならなければ境界損壊罪は成立しませんが、最終的に他の方法で境界が確定できたとして、境界標を損壊した時点で境界が分からなくなれば成立します。

(3)境界標が当初、境界を示す意図で置かれていたのではない場合はどうか

  境界標が、当初は別の目的で設置されたのに、年月を経て客観的に境界標として意味を持つにいたっているような場合も境界損壊罪は成立するのでしょうか。

   この点について、東京高裁昭和41年7月19日判決(判タ196号153頁)では、町道の敷地内に石垣が設置されたのに長期間にわたり放置され、石垣の所有者及び一般人もこれを境界標として承認していた場合には、石垣が真正な境界標でなくても、これを損壊すれば、境界毀損罪が成立する旨述べて、主観的に境界標と設置しなくても境界損壊罪が成立する余地を認めました。(弁護士中村友彦)