土地の境界が不明のまま土地を使用している場合に時効取得を主張できるか

 隣人の土地との境界が不明であるが、隣人の主張する境界を超えて、実際に土地を使用している場合においても、時効取得を主張できるかが問題になることがあります。

なお、土地の境界線の紛争に関して、当事務所が活動した場合の弁護士費用は土地の境界線の争いに関する弁護士費用(境界確定)のページをご覧ください。

1 私法上の境界と公法上の境界

  私法上の境界は、所有権等の範囲であるのに対して、公法上の境界とは、課税上の単位となったりするもので、国だけが定めることができます。時効取得が問題になるのは、公法上の境界ではなく、私法上の境界です。 

2 最高裁昭和42年7月21日判決(裁判集民 88号113頁)

 最高裁昭和42年7月21日判決は、民法162条は取得時効の要件として、「他人の物」を占有するとされているが、取得時効の制度は、永続して使用する事実状態を保護するものですから、自己の物についての取得時効を認めないものではない旨を述べています。

 具体的には、「取得時効は、当該物件を永続して占有するという事実状態を、一定の場合に、権利関係にまで高めようとする制度であるから、所有権に基づいて不動産を永く占有する者であっても、その登記を経由していない等のために所有権取得の立証が困難であったり、または所有権の取得を第三者に対抗することができない等の場合において、取得時効による権利取得を主張できると解することが制度本来の趣旨に合致するものというべきであり、民法162条が時効取得の対象物を他人の物としたのは、通常の場合において、自己の物について取得時効を援用することは無意味であるからにほかならないのであって、同条は、自己の物について取得時効の援用を許さない趣旨ではないからである」としました。

 したがって、離人との境界が不明の場合には、時効取得の要件を満たしておれば、現実に占有している土地の範囲について取得時効を主張できることになります。ただし、あくまでも所有権の範囲という私法上の境界についての問題だけであり、公法上の境界については、別途、筆界特定制度の利用や境界確定の訴えによることになります。(弁護士中村友彦)