訴状・労働審判等の呼出状が届いた!

 会社と労働者との間における紛争を未然に防ぐことが最も重要であることは間違いありません。紛争が生じてしまった場合、話し合いにより解決が望ましいことは言うまでもありませんが、話し合いによる解決ができない場合、最終的には裁判手続により解決されることになります。

 労働紛争を解決する裁判手続としては、労働訴訟、仮処分および労働審判の手続きがあります。

労働訴訟

 最終的な紛争解決手段であり、原告の従業員が会社を被告として、①解雇無効を理由とする地位確認請求、②配転命令無効確認請求、③解雇予告手当請求、④残業手当請求、⑤退職金請求、⑥労働災害による損害賠償請求、⑦セクハラ・パワハラ等による損害賠償請求、などが多く見受けられるところです。

 いずれの案件にしましても、緻密な主張、立証が必要となり、多大な労力、時間を費やすことになります。

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仮処分

 例えば、従業員が解雇は無効だと争う場合、地位確認請求の訴訟を提起することになりますが、判決で勝訴するまでの間、従業員は給与の支払いを受けられず、生活に困窮することになります。そこで、訴訟提起と同時に、賃金仮払い仮処分の申立てを行うことが一般です。

 ただし、仮処分が認められる場合、保全の必要性が必要であり、資産や収入がある場合には仮処分の発令がなされないこともあります。

労働審判

労働審判とは?

 労働審判手続は、労働審判官(裁判官)1人と労働関係に関する専門的な知識と経験を有する労働審判員2人で組織された労働審判委員会が、個別労働紛争を解決する手続きです。個別労働紛争の具体例として、解雇・雇止め・配転・出向・降格・降級の効力を争う紛争、賃金・退職金・解雇予告手当・残業手当・損害賠償金の支払を求める紛争などがあります。

手続

 原則として3回以内の期日で審理が終了します。労働審判委員会は、適宜調停を試み、調停による解決に至らない場合には、事案の実情に応じた柔軟な解決を図るための労働審判を行います。

注意点

① 労働審判の呼出しを受ければ直ちに弁護士に相談すること

 労働審判手続の申立てがあった場合、労働審判官は、原則として申立てがされた日から40日以内の日に第1回期日の指定をして、相手方を呼び出すとともに、答弁書の提出期限が定められます。申立人側は事前に十分に準備をして申立てることができますが、相手方となった会社は、短い期間で反論しなければなりません。したがって、会社が労働審判の呼出しを受ければ、速やかに弁護士に相談しなければ、弁護士の対応が困難になります。

② 第1回期日の変更は認められないこと

 原則として第1回期日の変更は認められません。したがって、相手方会社から受任する弁護士としては、通常の訴訟と同様に第1回期日を変更できると安易に考えてはいけません。

③ 会社側の人間も同席すべきこと

 労働審判手続では、第1回期日から、労働審判委員会から、会社担当者に対し、直接、審尋が行われます。したがって、当該案件を担当した担当者が出席する必要があります。場合によっては第1回期日で調停が成立することもありますので、権限を有する者も出席すべきです。

④ 第1回期日までに入念な準備が必要であること

 主張すべきことは答弁書において全て主張し、証拠も提出しなければなりません。また、第1回期日において担当者が詳細な審尋質問を受けます。したがって、第1回期日までに入念な準備が必要です。

審判に対する異議

 調停が成立しなければ、労働審判が行われます。労働審判に対して当事者から異議の申立てがあれば、労働審判はその効力を失い、労働審判事件は訴訟に移行します。

 

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(弁護士 井上元)