内容証明と特定記録の使い方
Q トラブルの相手方に書面を送りたいのですが、内容証明や特定記録などの方法があると聞きました。これらをどのように使い分けたらよいのですか? |
A 契約解除通知のように意思表示の内容が相手方に到達したことを証拠として残す必要がある場合には内容証明を、そこまで厳密な証拠が必要でなければ特定記録の方が適切なこともありますし、場合によっては普通郵便でよいこともあります。
「内容証明」というと、何となく大層なイメージがありますが、どのようなときに使えばよいのか、どのような効果があるのか、正確に理解されていない方も多いのではないでしょうか。むしろ、「特定記録」の方が適切な場合もあります。
そこで、「内容証明」、「特定記録」とはどのようなものなのか、どのように使い分ければよいのかについてご説明します。
内容証明
内容証明とは、いつ、いかなる内容の文書を誰から誰あてに差し出されたかということを、差出人が作成した謄本によって郵便局が証明する制度です。
仕組み
⑴ 郵便局に、①相手方に送る書面、②相手方に送る書面と同じ内容の謄本2通、③差出人及び受取人の住所氏名を記載した封筒、を提出します。謄本は郵便局が1通、差出人が1通を保管します。差出人が保管している謄本により、その内容の書面を送ったということの証明ができます。
⑵ 一般書留とする必要があります。書留では、相手方もしくは同居者に直接交付されます。不在の場合、郵便物は郵便局に戻され、受取人が7日以内に取りに行かない場合、返送されます。
⑶ 通常、オプションサービスである配達証明を併せて利用します。むしろ、配達証明付き内容証明郵便が原則とも言えます。相手方に配達されれば、後日、郵便局から差出人に配達証明書が交付されます。これにより、差出人は、文書が相手方に届いたことを証明することができます。
長所
⑴ 当方の意思表示が相手方に届いたことを証明できます。
例えば、売掛金の消滅時効が迫っている場合、請求書を送って催告すれば、とりあえず消滅時効をとめることができます(ただし、6ヶ月以内に裁判等を提起する必要があります。民法150条)。請求書が相手方に届いたことを証明しなければなりませんので、配達証明付き内容証明郵便で送ります。
契約解除の意思表示は、解除通知が相手方に届いたことを証明しなければなりませんので、配達証明付き内容証明郵便で送ります。
⑵ 当方が強い態度であることを示すことができます。
法的な効果ではありませんが、内容証明郵便で送ると、差出人が強い態度で臨んでいることを示すことができます。
短所
⑴ 相手方が不在であれば届きません。したがって、相手方に意思表示を到達させることが絶対に必要である場合には、不在で返送されると、別の方法を採る必要があります。
⑵ 相手方との円満な関係を破壊する可能性があります。
特定記録
特定記録とは、郵便物やゆうメールの引受けを記録するサービスであり、受取人の郵便受箱に配達されます。
仕組み
⑴ 引受けの記録がされ、受領証が交付されます。したがって、郵便物を差し出したことの記録が残ります。
⑵ 郵便物は受取人の郵便受箱に配達されます。
⑶ 差出人は、インターネットで配達状況を確認できます。
長所
⑴ 相手方が不在の場合、内容証明郵便では返送されますが、特定記録なら郵便受箱に配達されますので、相手方に読んでもらう可能性は高くなります。
⑵ 普通郵便では出しっぱなしとなってしまいますが、特定記録ならインターネットで配達状況を確認できます。
短所
⑴ 内容証明のように、郵送した書面の内容については証明してもらえません。
⑵ 郵便受箱に配達されただけでは、差出人の意思表示が相手方に到達した証明とはならない可能性があります。
内容証明と特定記録の使い分け
相手方と通常の取引が続いている場合、内容証明や特定記録で郵送する必要はありません。請求書にしても、通常は普通郵便で十分でしょう。
内容証明で送るのは、上記のように、当方の意思表示が相手方に確実に届いたことを証明する必要がある場合です。
意思表示が相手方に届いたことを証明する必要はなく、まず、相手方に書面を読んでもらうことを優先する場合には特定記録の方が使いやすいのではないかと思います。
このように、何が何でも「内容証明」ではありません。状況により、普通郵便、特定記録、配達証明付き内容証明郵便を使い分けていただければと思います。
参考サイト
民事事件全般に関するご相談はその他全般のページをご覧ください。
(弁護士 井上元)