離作料と正当事由
Q 離作料とはどのようなものですか?離作料を支払えば農地賃貸借契約を解除・解約することができるのでしょうか? |
A 農地賃貸借契約の解除・解約の許可に際して離作料の支払いを条件とされることがあります。離作料の支払いは農地法18条2項6号の正当事由の要素の一つとて考慮されるにとどまり、離作料を支払えば必ず賃貸借契約を解除・解約できるとは限りません。
離作料とは?
農地の賃貸借契約が終了される際、賃貸人から賃借人に対し、その対価として一定の金員が支払われることがあります。これを離作料と言います。
当事者間における交渉の場合、離作料の額は当事者間の個別具体的な事情や打算・思惑によって決定されることになります。これに対し、知事等が賃貸借契約の解除・解約を許可するに際し、「条件」として離作料の支払いを命じることがあります。
解除・解約における離作料の位置づけ
農地法18条2項6号は、農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることについて知事等が許可することができる場合として、「その他正当の事由がある場合」を掲げているところ、これは、賃借人の離農等により賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合をいうものと解され、同法1条及び2条の2の各規定の内容に照らせば、同法18条2項6号の「その他正当の事由がある場合」に該当する事情があるといえるか否かは、当該事案における諸般の事情を総合考慮して、農地の賃貸借の当事者が解約の申入れ等をすることを認めることが当該農地の適正かつ効率的な利用につながるといえるか否か等という観点から判断すべきであるとされています(大阪地判令和3・10・28判例地方自治494号88頁)。
そして、賃貸借契約を終了させるに際して、賃借人に対する金銭的補償を全くすることなく無条件に解除することを認めるのではなく、一定の金銭的補償をすることで、農地の賃貸借を終了させることが適当であると客観的に認められる場合、離作料の支払いが、「その他正当の事由がある場合」(農地法18条2項6号)に該当するための要素となります(上記大阪地判令和3・10・28、広島高判令和2・9・28判例地方自治478号99頁)。
離作料の算定
離作料の算定基準につき、最判平成13・3・28民集55巻2号611頁における元原利文裁判官の補足意見では「市街化区域農地の賃貸借契約は、土地の使用目的が農地としての利用に限定されており、宅地に準ずる土地としての最有効利用が認められていない。この事実は、農地の賃貸借契約の解約に当たり賃借人に交付される離作料の額については、宅地の借地関係の終了に際して借地人に交付されるいわゆる立退料の算定方法とは異なった視点で考えるべきことを示しているのであり、知事が農地法20条(※現18条)2項2号ないし5号(※現6号)に該当するとして賃貸借契約の解約を許可する際に定める離作料の額についても、これらの事情が考慮されるべきものである。」とされ、福田博裁判官・藤井正雄裁判官・大出峻郎裁判官の反対意見でも「市街化区域農地の小作の場合には、上述したように、現行法制上、営農の継続につき原則として否定的な評価がされ、小作関係が早晩終了に至ることが予測され期待されているのであり、小作農が土地について借地権者に類するような強固な権利を持っているわけではないのであるから、あたかも小作農が土地の価格の一部を把握しているかのような前提の下に離作料を算定しなければならないとする理由はない。」とされています。
同最判後の下級審においては、概ね、上記補足意見及び反対意見の考え方により判断されています。
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