生産緑地制度とは?
Q 生産緑地制度について説明してください。 |
A 生産緑地制度とは、市街化区域内の農地で、良好な生活環境の確保に効用があり、公共施設等の敷地として適している一定面積以上の農地を都市計画に定め、建築行為等を許可制により規制し、都市農地の計画的な保全を図る制度です。市街化区域農地には宅地並み課税がされますが、生産緑地に指定されると軽減措置が講じられます。
平成3年(1991年)の生産緑地制度
平成3年地方税法改正と生産緑地制度
平成3年(1991年)の地方税法の改正により、生産緑地法に定める生産緑地地区に指定された場合を除き、平成4年(1992年)度以降、いわゆる3大都市圏の特定市に所在するすべての市街化区域農地が「宅地並み課税」の対象とされることになりました。
一方、生産緑地地区に指定されれば、①固定資産税についての農地課税と②相続税の納税猶予という税法上の優遇措置が与えられました。そのため、多くの農地が生産緑地地区に指定されました。
生産緑地地区指定の効果
- 生産緑地について使用または収益をする権利を有する者は、当該生産緑地を農地等として管理しなければなりません(生産緑地法7条1項)。ただし、これを怠った場合の罰則はありません。
- 生産緑地地区内においては、建築物の新築、宅地の造成等が原則として禁止され、これに違反したときは、市町村長により原状回復命令が発せられます(同法8条、9条)。禁止または命令に違反した者には刑事罰があります(同法18条、19条)。
生産緑地地区指定の解除
生産緑地の所有者は、①指定から30年が経過したとき、または②農業等の主たる従事者が死亡し、もしくは農業等に従事することを不可能にさせる故障として生産緑地法施行規則5条で定めるものを有することとなったとき等には、市町村長に当該生産緑地を時価で買い取るよう申し出ることができます(同法10条。なお、同法15条)。
ただし、市町村が買い取ることはほぼないと言われており、この場合、生産緑地地区の指定が解除されます。そして、宅地並み課税となり、相続税の納税猶予もなくなります。
逆ざや現象
生産緑地地区内の農地は宅地並み課税の対象から除外されますが、当該農地に対抗要件を備えた賃借人がいる場合には生産緑地地区に関する都市計画の案について賃借人の同意が必要とされているため(生産緑地法3条)、当該農地の所有者が生産緑地地区の指定を受けることを希望したとしても、賃借人が同意しない限り、当該農地を含む区域が生産緑地地区に指定されることはありません。
生産緑地地区の指定によって土地の評価額が低く抑えられ、将来の合意解約の際の離作補償の点で不利になることを危ぐして、これに同意しない小作人も多く、その結果、宅地並み課税により固定資産税等の額が小作料の額を上回るいわゆる「逆ざや現象」が起こりました(最判平成13・3・28民集55巻2号611頁)。
生産緑地法の平成29年(2017年)改正
平成3年の生産緑地制度は、都市圏における農地を宅地化することを奨励する制度であり、土地バブル時代の政策と言えます。
しかし、その後、地価の下落、少子高齢化など、平成3年当時の状況が変わり、農産物供給、防災、良好な景観の形成、国土・環境の保全、農作業体験・交流の場、農業に対する理解醸成など、都市農業の多様な機能が見直され、平成29年(2017年)、次のような法律改正が行われました。
面積要件の引下げ
従来、生産緑地地区に指定されるための面積要件は500㎡以上とされていましたが、条例で300㎡まで引き下げることが可能とされました。
建築規制の緩和
生産緑地地区に設置可能な建築物として、農産物等加工施設、農産物等直売所、農家レストランが追加されました。
特定生産緑地制度
生産緑地の所有者等の意向を基に、市町村は当該生産緑地を特定生産緑地として指定できることとされました。指定された場合、市町村に買取り申出ができる時期は、「生産緑地地区の都市計画の告示日から30年経過後」から10年延期され、10年経過後は、改めて所有者等の同意を得て、繰り返し10年の延長ができることとなりました。
平成3年の生産緑地制度は、その運用上、平成4年(1992年)12月末日までに行うものとされ、関係各市町村の意向調査に応じ指定を希望したものについては、要件を満たす限り原則として指定が行われましたが、平成5年(1993年)以降はごく例外的にしか指定は行わないこととされました(平成5年1月27日付け建設省都公緑発第7号建設省都市局長通達「生産緑地法の運用について」)。
そのため、ほとんどの生産緑地は2022年(令和4年)に30年を経過することになりましたが、上記のとおり特定生産緑地制度により期間が延長されました。令和4年12月末時点において、平成4年に定められた生産緑地(全生産緑地面積の約8割)の約9割が特定生産緑地に指定されています(国土交通省都市局都市計画課令和5年2月14日報道発表「平成4年に定められた生産緑地の約9割が特定生産緑地に指定されました」)。
生産緑地所有者の方が検討すべきこと
平成4年に生産緑地地区に指定された市街化農地は、2022年(令和4年)以降、①固定資産税についての農地課税と②相続税の納税猶予という、税法上の優遇措置は終了するはずでしたが、社会状況が変わり、上記のとおり、特定生産緑地制度により10年毎の延長が認められることになりました。
農業政策は時代によって大きく変動しており、将来的にどのようになるか分かりませんが、生産緑地を所有している方は、子あるいは孫の代まで見据えて、農業を継続するか否か、自らのライフプランを検討すべきかと思われます。
また、生産緑地の農地を賃貸(小作)に出している場合、賃貸借契約(小作契約)の解約、解除の話しになることも多いものと思われます。その際には、離作料の額をどのように決めるのかが重要となる点にご留意ください。
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(弁護士 井上元)
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