相続した農地に昔の仮登記が残っている!
Q 相続した農地に昔の仮登記が残っています。これを抹消するにはどうすればよいのでしょうか? |
A 農地売買の際に行われる仮登記は、買主の売主に対する、農地法上の許可を条件とする所有権移転にかかる請求権を保全するためのものであり、この請求権は消滅時効にかかります。昔の仮登記は消滅時効にかかっている可能性が高く、消滅時効を主張しても買主が仮登記抹消に応じてくれない場合、買主に対して仮登記抹消を求める訴訟を提起し、勝訴判決を得て、当該仮登記の抹消登記手続をすることになります。
許可申請協力請求権の消滅時効
農地について売買契約が成立しても、農地法上の許可がなければ農地所有権移転の効力は生じませんが、売買契約の成立により、売主は、買主に対して所有権移転の効果を発生させるため買主に協力して許可申請をすべき義務を負い(許可申請協力義務)、また、買主は売主に対して協力を求める権利(許可申請協力請求権)を有します。
この許可申請協力請求権が消滅時効にかかるか否かについて、消極説と積極説が対立していましたが、最判昭和50・4・11民集29巻4号417頁は積極説を採用して消滅時効にかかるとしました。
なお、従来、債権の消滅時効の期間は10年でしたが、改正民法(2020年4月1日施行)により、同日以降に生じた債権についての消滅時効の期間は5年となりました(民法166条)。
消滅時効の起算点
許可申請協力請求権の消滅時効の起算点は、原則、売買契約成立の日ですが、市街化調整区域内の農地を売買した場合、売買契約後に当該農地が市街化区域に指定された場合などにおいては争いもあります。
消滅時効援用と権利濫用
上記のとおり許可申請協力請求権は消滅時効にかかりますが、一方、消滅時効の援用を信義則に反し権利の濫用として許されないとする裁判例も多く現れています。
宅地化と許可請求権の消滅時効
許可申請協力請求権の消滅時効が援用されないうちに、当該農地が非農地化したときは、同農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が同請求権の消滅時効を援用しても、その効力は生じません。
最判昭和61・3・17民集40巻2号420頁
時効による債権消滅の効果は、時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生ずるものと解するのが相当であり、農地の買主が売主に対して有する県知事に対する許可申請協力請求権の時効による消滅の効果も、10年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、売主が右請求権についての時効を援用したときにはじめて確定的に生ずるものというべきであるから、右時効の援用がされるまでの間に当該農地が非農地化したときには、その時点において、右農地の売買契約は当然に効力を生じ、買主にその所有権が移転するものと解すべきであり、その後に売主が右県知事に対する許可申請協力請求権の消滅時効を援用してもその効力を生ずるに由ないものというべきである。
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(弁護士 井上元)
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