任意後見を利用すべき場合

Q どのような場合に任意後見を利用すべきなのでしょうか?

A 自分の意思どおりに処理してほしい場合や自分が信頼する人に任せたい場合には任意後見を利用すべきと思われます。また、財産管理契約や死後事務委任契約と併用することも多く行われています。


1 任意後見を利用すべき場合

⑴ 自分の意思どおりに処理してほしい場合

 法定後見における成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)は、本人の意思を尊重して後見事務を行いますが、成年後見人等がどのような事務を行うか(どのような権限を持つか)ということについては家庭裁判所が決定しますから、本人の意思に基づくわけではありません。

 また、本人の判断能力はすでに不十分な状況になっていますから、孫などへの財産的な援助を継続したいと限っているような場合に、後見人等にその希望を伝えることができないことも考えられます。

 任意後見ならば、本人が事前に自分の希望を詳細に伝えておくことにより、希望する財産管理や身上保護を、本人の望む人に委ねることが可能ですので、より本人の意思に基づいた後見事務を実現することが可能となります

⑵ 自分が信頼する人に任せたい場合

 法定後見の場合では、家庭裁判所が本人が希望する人を成年後見人等に選任してくれるとは限りません。これに対し、任意後見であれば、自分の希望する人に財産の管理や身上保護を任せることができます。本人が任せる人を自分で選びたい場合には、任意後見を利用すべきでしょう。

2 財産管理契約・死後事務委任契約との併用

 後見は本人の意思能力が低下してから死亡するまでのものです。しかし、体力の低下などにより意思能力が低下する前でも財産を管理してほしい場合もあります。また、自分が死んだ後の葬儀や納骨などを任せたい場合もあります。このような場合、前者では財産管理契約が、後者では死後事務委任契約が利用される場合が多いようです。

 将来、頼るべき人がいない方の場合、一度、これらの制度の利用をお考えになってはいかがでしょうか?

(弁護士 井上元)

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