共有物分割とは?
Q 「共有物分割」という言葉をよく聞きますが、「共有物分割」とはどういうことなのでしょうか? |
A 相続により1つの不動産をきょうだいで共有したり、夫婦や親子が自宅を共有で購入することがあります。しかし、このような共有状態のままなら、使用方法や売却について意見が一致しなければ、トラブルが生じてしまいます。「共有物分割」とはこのような共有状態を解消するための手続きです。
共有とは何か?
共有とは、1つの物を2人以上の者で所有することであり、この場合、各共有者が共有物に対して有する権利を「持分」と呼びます。
共有と準共有
共有の対象となる権利は所有権であり、所有権以外の財産権を数人が共同して有する関係を「準共有」といいます(民法264条)。準共有には原則として共有に関する規定のすべてが準用されます。
準共有の成立が認められる財産権としては、地上権、永小作権、地役権、抵当権などがあります。
共有の性質を有する入会権については、各地方の慣習に従うほか、共有の規定が適用されます(民法263条)。
不動産以外の財産についての共有物分割が争われた事例として次のような裁判例があります。
- モディリアーニの絵画(神戸地尼崎支判平成23・12・27判例時報2142号67頁)
- 換地予定地に対する使用収益権(最判昭和41・12・22最高裁判所裁判集民事85号795頁)
共有物分割の方法
共有物分割とは、上記のような共有状態を解消し、単独所有としたり、売却して代金を分配することです。こうすることによって、各共有者が共有による制約から解放され、自由に管理、処分することができるようになります。
具体的な共有物分割の方法としては次の3つがあります。
①現物分割
例えば、AとBが共有する1筆の土地を、A土地とB土地の2筆に分筆し、AがA土地を、BがB土地を取得するという方法です。
②価格賠償
例えば、AとBが共有する1筆の土地につき、AがBの持分を買い取る方法です。
③換価分割(競売)
例えば、AとBが共有する1筆の土地を売却し、AとBで売却代金を分けるという方法です。
共有物分割が認められる理由
民法256条本文で「各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。」とされ、更に、第258条では「共有物の分割について共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、その分割を裁判所に請求することができる。」と規定されています。すなわち、共有状態を解消したい共有者は、裁判により共有物分割を強制できるのです。
最高裁昭和62年4月22日判決(民集41巻3号408頁)
最判昭和62・4・22は共有物分割請求が認められていることについて次のように述べています。
- 共有の場合にあっては、持分権が共有の性質上互いに制約し合う関係に立つため、単独所有の場合に比し、物の利用または改善等において十分配慮されない状態におかれることがある。
- 共有者間に共有物の管理、変更等をめぐって、意見の対立、紛争が生じやすく、いったんかかる意見の対立、紛争が生じたときは、共有物の管理、変更等に障害を来し、物の経済的価値が十分に実現されなくなるという事態となる。
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- 民法256条は、かかる弊害を除去し、共有者に目的物を自由に支配させ、その経済的効用を十分に発揮させるため、各共有者はいつでも共有物の分割を請求することができるものとし、しかも共有者の締結する共有物の不分割契約について期間の制限を設け、不分割契約は同制限を超えては効力を有しないとして、共有者に共有物の分割請求権を保障しているのである。
- 共有物分割請求権は、各共有者に近代市民社会における原則的所有形態である単独所有への移行を可能ならしめ、上記のような公益的目的をも果たすものとして発展した権利であり、共有の本質的属性として、持分権の処分の自由とともに、民法において認められるに至ったものである。
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(弁護士 井上元)
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