共有物分割請求訴訟の特徴

Q 共有物分割請求訴訟にはどのような特徴があるのでしょうか?

A 共有物分割請求訴訟は「形式的形成訴訟」とされており、当事者の主張にかかわらず、裁判所は何らかの分割をしなければなりません。


 共有物分割請求訴訟は「形式的形成訴訟」とされています。「形式的形成訴訟」とは、訴訟の形式はとっているものの、権利関係の確定を目的とするものではなく、その実質は非訟事件であり、ただ、対象となる法律関係の重要性などの政策的理由から訴訟手続とされているものです。

 そのため、共有物分割訴訟では、次のような特徴があります。

⑴ 当事者は、単に共有物の分割を求める旨の申し立てをすれば足り、分割の方法を具体的に指定することを要しない。

 したがって、請求の趣旨では、「別紙物件目録記載の土地を分割する。」などとすれば訴訟として成り立つことになります。ただし、通常は希望する分割方法を請求の趣旨で明示します。

⑵ 当事者が具体的な分割方法を希望しても、裁判所はこれに拘束されない。

 ただし、当事者は、裁判所により自分の希望する分割をしてもらうためには、その分割方法が適切であることの主張・立証をすべきことは当然です。

⑶ 裁判所は、請求棄却判決をすることができず、何らかの結論を出さなければならない。

 共有物分割の請求をすることが権利濫用として棄却されることはありますが、原則として、訴えを提起すれば、裁判所は何らかの分割をしなければならないのです。

最高裁昭和57年3月9日判決(集民135号313頁)

「共有物分割の訴えにおいては、当事者は、単に共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することは必要でないとともに、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、当事者が申し立てた分割の方法にかかわらず、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができるものと解するのが相当である。」

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(弁護士 井上元)

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