土壌汚染・地中障害物のある土地の売主に対する責任追及方法
Q 購入した土地に土壌汚染や地中障害物がありました。売主の責任を追及したいのですが、どのような請求をすることができるのでしょうか? |
A 改正後民法では土地の修補、代金の減額を請求するか、損害賠償の請求、契約解除をすることができます。
改正民法における契約不適合責任
改正前民法では、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、買主は、売主に対し、損害賠償の請求ができ、その瑕疵が契約をした目的を達することができない程のものであるときは契約の解除をすることができるとされていました(改正前民法566条1項)。
令和2年(2020年)4月1日から施行されている改正民法では、従来の瑕疵担保責任を債務不履行責任とし、売主は種類、品質及び数量に関して契約の内容に適合した目的物を引き渡す義務を負うことを前提に、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない場合(契約不適合)には、買主は、救済手段として、
- その修補や代替物の引渡し等の履行の追完の請求(民法562条1項本文)
- 代金減額の請求(同法563条1項、2項)
ができるとされました。
また、
- 民法415条の規定による損害賠償の請求(民法564条)
- 民法541条・542条による契約の解除(民法564条)
をすることもできます。
改正民法
第541条(催告による解除)
当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
第542条(催告によらない解除)
1 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
2 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。
一 債務の一部の履行が不能であるとき。
二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
第562条(買主の追完請求権)
1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。
第563条(買主の代金減額請求権)
1 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
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