売主の説明責任

Q 土地の売買における売主の説明義務とは何でしょうか?

A 土地の売買に際し、売主は、土壌汚染等を知っておれば買主に説明すべきですし、知らなかったとしても、買主が土地の来歴等の土壌汚染等のリスクを判断するための情報を提供する義務があると解されており、これが説明責任を呼ばれています。


 土地の売買に際し、売主は、土壌汚染・地中障害物(埋設物)を知っておれば買主に説明すべきですし、知らなかったとしても、土地の来歴、従前の土地利用方法など、買主が購入した土地の土壌汚染・地中障害物(埋設物)についてのリスクを判断できるための情報を買主に提供する義務があると言えます。

 例えば、売主が、過去、当該土地土の工場やビルが建っていたところ、これを解体して更地で売却する場合、買主は土壌汚染・地中障害物(埋設物)についてのリスクを判断することができず、これを判断するためには売主による情報提供が必要なのです。このような売主の情報提供義務が説明責任と言われており、これに違反すると、不法行為責任や債務不履行責任が認められることになります。売主の暇庇担保責任や契約不適合責任は、除斥期間が経過していたり、瑕疵担保責任免除特約等により軽減されていることもあります。このような場合、説明義務違反による不法行為責任や債務不履行責任が追及されているのです。

 平成29年の改正民法(202041日施行)では、「売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」とされていますが(566条本文)、売主が引渡しの時に引き渡した目的物が契約の内容に適合しないことを知り、又は重大な過失によりよって知らなかったときは1年間の期間制限は適用されません(同条ただし書)。

 しかし、軽過失の場合には上記期間制限が適用されますので、この場合、説明責任の有無が争いとなります。

東京地判平成15516判時184959

 本件売買契約は、原告において、本件土地を一般木造住宅の敷地として分譲販売することを前提に、原告の購入申入れを端緒として交渉が始まり、双方の交渉の結果、価格の点での合意がなり、被告の申出を受け、本件免責特約が合意の一内容となって成立したものであること、本件土地は売主である被告がもともと自ら業者に依頼して従前建物を建築し、その敷地として自用し、従前建物の解体・撤去も被告自身が業者に依頼して行ったものであり、本件土地内に従前建物解体・撤去に伴う地中埋設物が残置しているか否かについて、第一次的に社会的責任を負うべき立場にあるとともに、これを容易に把握しうる立場にあったものと認められるところ、上記本件免責特約を含む本件売買契約成立の経過及び本件地中埋設物に関して被告が有していた地位に照らせば、被告は、原告との間において、本件免責特約を含む本件売買契約を締結するに当たり、本件土地を相当対価で購入する原告から地中埋設物の存否の可能性について問い合わせがあったときは、誠実にこれに関連する事実関係について説明すべき債務を負っていたものと解するのが相当である。そして、被告は、原告に対し、売買契約当事者の一方として、前記のような債務を負っていたのに、これを怠って原告からの地中埋設物がない旨の確認の問いかけに対し、地中埋設物の存在可能性について全く調査をしていなかったにもかかわらず、問題はない旨の事実と異なる意見表明をしたものであるから、被告に説明義務違反の債務不履行があることは明らかというべきである。そして、原告は、被告の上記債務不履行の結果、本件土地内に地中埋設物が存在することを全く予想せずに、本件地中埋設物の撤去に伴う支出を余儀なくされることを前提としないで、本件売買契約を締結したのに、前記認定のとおり、本件地中埋設物の撤去に伴う支出を余儀なくされたものであるから、被告は、原告に対し、上記債務不履行によって生じた損害の賠償責任を負うものと解するのが相当である。

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