隣同士の家の間で、境界線が不明確として争われることがあります。境界線の争いについて、境界確定の訴えがありましたが、裁判上の手続きであり時間や費用がかかりますし、一般の人にとって、やはり訴訟は気がひけます。平成17年の不動産登記法の改正に伴い、迅速な境界の争いの解決手段として設けられたのが、筆界特定制度です。
なお、土地の境界線の紛争に関して、当事務所が活動した場合の弁護士費用は土地の境界線の争いに関する弁護士費用(境界確定)のページをご覧ください。
1 筆界
公法上の境界のことです。公法上の境界は国のみが定められるもので、私法上の境界である所有権の範囲とは異なります。
2 筆界特定制度
土地の所有名義人等の請求により、筆界特定登記官が、土地家屋調査士のような外部の専門家を調査等を受け、職権でも資料の収集を行い、筆界の位置を特定し、その認識を表示する制度です。
3 意義
①土地家屋調査士のような専門家が関与すること
②簡易迅速な紛争解決が期待
③所有権の範囲の争いの解決にも影響を与えうる
4 効力
筆界特定登記官の境界についての認識であって、あらたに境界を設定するわけでなく、行政処分ではありません。境界が不明確な場合は、特定できる限度で筆界の位置のある範囲を示すにとどまります。行政処分ではないことから、筆界特定の判断に不服がある場合は、行政不服審査法による審査請求や行政事件訴訟法による取消請求はできません。再度の申請も、新しく重要な証拠が発見されない限り認められません(不動産登記法132条1項7号)。結局、不服があれば、境界確定の訴えを起こすことになります。
5 境界確定の訴えとの関係
境界確定の訴えの判決の効力が優先します。ただし、筆界特定制度の結果は、境界確定の訴えでも重要な資料の一つになります。
境界確定の訴えが確定しているときは、境界確定の訴えの判決の効力が優先しますから、筆界特定をしても意味がないので、筆界特定の申請をしても却下されます(不動産登記法132条1項6号)。(弁護士中村友彦)