債権回収~法的手続

Q 債権の保全・回収のための法的手続にはどのようなものがありますか?

A 内容証明郵便の送付・支払督促・仮差押・訴訟・民事調停・担保権の実行・強制執行などがあります。状況に応じて使い分けてください。


1 内容証明郵便の送付

 内容証明郵便により「支払がなければ法的手続をとる」など強めの内容の書面を送れば、貴社の債権回収に対する意思を示すとともに、相手方に対する心理的なプレッシャーを与えることになります。

 弁護士名による内容証明郵便を送ると、更に、強く心理的プレッシャーを与えることになります。

2 支払督促

 支払督促とは、金銭債権などについて、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立て、支払を命じてもらう手続です。異議がなければ仮執行宣言付支払督促が出され、強制執行をすることができます。しかし、相手方が支払督促、仮執行宣言付支払督促に異議を出せば訴訟に移行しますので、債権につき争いがあるのか否か、相手方が異議を出す可能性があるのか否かを検討のうえ利用するか否かを決めるべきです。

3 仮差押

 相手方が不動産、預金、売掛金などの財産を持っていることが判明しているなら、裁判所に仮差押の申立を行って、相手方の財産を保全することを検討すべきです。訴訟を提起すると、判決取得まで最低でも4ヶ月程度、争われると1年は覚悟する必要があります。その間、相手方が持っていた財産を処分してしまうと、せっかく勝訴判決を得ることができても回収できなくなってしまいます。

 仮差押をするためには保証金を供託する必要があります。不動産の場合は固定資産評価額の1/4から1/5程度、債権(売掛金・預金など)の場合は請求債権の1/4から1/5程度の金額の場合が多いようです。

4 訴訟

 裁判所に訴状を提出して手続が進みます。債権の存在や額について争いがなければ早期の判決が期待できます。勝訴判決を得ることができると被告の財産に強制執行することができます。また、和解で解決することもあります。仮差押をした場合には原則として訴訟を提起することになります。

 60万円以下の請求なら少額訴訟の手続を利用することができます。少額訴訟は1回の期日で審理を終えて判決が出されるという迅速な手続きです。

5 民事調停

 簡易裁判所で調停員をまじえて話し合いで解決する方法です。話し合いで解決する見込みがある場合には民事調停を検討してもよいでしょう。

6 担保権の実行

 担保を取っている場合には担保権を実行することになります。ただし、先順位の担保権が設定されており、余剰がない場合には担保権を実行する意味はありません。

7 強制執行

 判決などの債務名義があれば強制執行をすることができます。

 債権(売掛金・預金など)は差し押さえて直接取り立てることができます

 不動産の場合には競売にかけ、売却代金から配当を受けることになります。不動産を競売にするためには裁判所に予納金を納める必要がありますので、競売により回収が可能かどうかの判断が必要です。

(弁護士 井上元)

 

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