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取締役会議事録の閲覧・謄写請求

取締役会の議事については、法務省令(会社法施行規則101条)で定めるところにより、議事録を作成し、出席した取締役・監査役が署名・記名押印しなければなりません(会社法369条3項)。そして、議事録は10年間本店に備え置かれます(会社法371条1項、976条8号)。

株主による閲覧・謄写請求

株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、取締役会議事録の閲覧・謄写を請求できます(会社法371条2項、976条4号)。

ただし、監査役設置会社、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社においては、裁判所の許可を得ることが必要です(会社法371条3項、868条1項、869条)。

会社債権者

取締役会設置会社の債権者は、役員または執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、取締役会議事録の閲覧・謄写請求をすることができます(会社法371条4項)。

親会社社員

親会社社員も、親会社(たとえば持株会社)の役員等の責任を追及するため、あるいは子会社の役員等の特定責任等(会社法847条の2、847条の3)を追及するためには、重要な子会社の経営状況を調査する必要があり得るので、裁判所の許可を得て当該請求をすることができます(会社法371条5項、868条2項)。

裁判例

東京地裁平成18年2月10日決定・判例時報1923号130頁

会社の株主総会における質問事項の準備、株主代表訴訟提起の要否を検討するための閲覧・謄写請求が許可されました。

佐賀地裁平成20年12月26日決定・金融商事判例1312号61頁

取締役会議事録の謄写許可申請事件において、株主に情報収集目的という個人的利益を図る目的が認められる場合であっても会社法371条2項の権利行使の必要性の要件が直ちに否定されるものでないなどとして謄写が許可され、かつ、非訟事件手続が職権探知主義であることに基づき、会社から当該取締役会議事録を提出させ、これを職権により取り調べたうえで、著しい損害を及ぼす部分を議事録から具体的に特定し、当該部分以外は、謄写が許可されました。ただし、〔控訴審〕福岡高裁平成21年6月1日決定は謄写を認めませんでした。

福岡高裁平成21年6月1日決定・金融商事判例1332号54頁

株主が会社法371条2項の規定に基づき株式会社に対してした取締役会の議事録の謄写許可申請であっても、株主の地位に仮託して、個人的な利益を図るため当該申請をしたものと認めるのが相当であるばかりでなく、当該申請によって会社の企業秘密たる事項を記載した部分が閲覧・謄写されることになれば、会社の将来の事業実施等についても重大な打撃が生じるおそれがあり、会社の全株主にとっても著しい不利益を招くおそれがあると認められる場合には、当該申請は同条2項所定の「株主の権利を行使するため必要であるとき」の要件を欠くか、あるいは、権利の濫用に当たるとして許可しませんでした。

大阪高裁平成25年11月8日決定・判例時報2214号105頁

株主が、電力事業会社の原子力発電事業に関する基本的認識および姿勢を是正する目的で、基本的な経営方針を定める具体的内容の定款変更や取締役選任に関する株主提案を行うために、当該電力事業会社の取締役会議事録の関連事項の閲覧および謄写を請求する場合には、会社法371条2項の規定する権利行使の必要性が認められるとされました。