会社法トラブルのご相談は会社法の紛争をご覧ください。

 

取締役解任の訴え

取締役の職務執行に関し、不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があったため、株主総会で当該取締役を解任する議案を提出しても、株主総会における多数派により否決されることがあります。

この場合、一定の株主は、取締役の解任を求める訴えを提起することができます(会社法854条)。

原告適格

持株数

解任の訴えを提起できる株主は、総株主の議決権の100分の3または発行済株式の10分の3(定款による引下げは可能)以上の数の株式を6か月前から引き続き有する株主です。ただし、株式譲渡制限会社の場合は、6か月の株式保有期間は不要です。

6か月の起算点

6か月の起算点は、株主総会の時点ではなく、訴え提起の時点であると解されています。

数人が合同しても可

少数株主が、単独で行使するのでも、数人が合同して行使するのでも構いません。

訴訟係属中に100分の3を下回った場合

訴訟係属中に株式の譲渡をして、所定の持株比率を下回った場合には原告適格を失うと解されています。

新株発行により持株比率が減少した場合、原則として、原告適格は失われますが、例外的に、新株発行が原告の持株比率を低下させて解任の訴えを回避する目的で行われた場合には、被告が原告適格喪失の主張をすることは権利濫用・信義則違反により制限されることがあります。

最一小決平成18年9月28日・民集60巻7号2634頁

「株式会社の株主が商法294条1項に基づき裁判所に当該会社の検査役選任の申請をした時点で、当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3以上を有していたとしても、その後、当該会社が新株を発行したことにより、当該株主が当該会社の総株主の議決権の100分の3未満しか有しないものとなった場合には、当該会社が当該株主の上記申請を妨害する目的で新株を発行したなどの特段の事情のない限り、上記申請は、申請人の適格を欠くものとして不適法であり却下を免れないと解するのが相当である。」

被告適格

誰が被告になるのか?

会社および当該取締役の両方が被告となります(会社法855条)。

取締役の員数を欠くため未だ取締役の権利義務を有している者の被告適格

取締役の員数を欠くため未だ取締役の権利義務を有している者の被告として取締役解任の訴えを提起することはできません。

最高裁平成20年2月26日決定・民集62巻2号638頁

「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において、同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは、許されないと解するのが相当である。

その理由は次のとおりである。

⑴ 同条は、解任請求の対象につき、単に役員と規定しており、役員権利義務者を含む旨を規定していない。

⑵ 同法346条2項は、裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ、役員権利義務者に不正行為等があり、役員を新たに選任することができない場合には、株主は、必要があると認めるときに該当するものとして、仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして、同条1項は、役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ、新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから、役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても、株主は、仮役員の選任を申し立てることにより、役員権利義務者の地位を失わせることができる。」

訴えの利益

取締役解任の訴え係属中に被告取締役が退任し、別の取締役が選任された場合には、解任の訴えの目的は、現に取締役の地位にある者の地位を剥奪することにありますから、訴えの利益を失います。

取締役解任の訴え係属中に被告取締役が退任し、総会において再任された場合でも、裁判例では訴えの利益は原則として否定されています。

株主総会における否認決議

取締役解任の訴えを提起するには、株主総会において当該取締役の解任が否決されたことが必要です。

裁判例

東京地裁昭和28年12月28日判決・判例タイムズ37号80頁

取締役が特段の事由なく株主総会の招集を怠り、設立以来約2年半の間に1回も株主総会を開かなかった事案で、法令に違反する重大な事実があるとされました。

神戸地裁昭和51年6月18日判決・判例時報843号107頁

親会社がボーリング場を建築、所有し、これを子会社に賃貸してその経営に当たらせたが、子会社の経営不振のため1億7355万円余の債権放棄を余儀なくされた場合について、親会社の取締役に忠実義務違反がないとされました。

大阪地裁平成5年12月24日判決・判例時報1499号127頁

有限会社の取締役が、自己と会社の現金出納を全く区別せず、公私を混同した会計処理をしており、会社収入を私的に費消していることが推認される事案で、「不正の行為」が認められました。

高松高裁平成18年11月27日決定・金融商事判例1265号14頁

取締役解任の訴えについて規定した会社法854条1項の取締役解任事由が「あったにもかかわらず」とは、当該役員解任議案が否決された後に当該役員について生じた不正行為または法令もしくは定款に違反する重大な行為をもって取締役解任の訴えの解任事由とすることはできないが、当該役員解任議案が否決された時点までに生じた解任事由については、当該訴えの取締役解任事由とすることができることを意味すると解するのが相当であるとされました。

京都地裁宮津支部平成21年9月25日判決・判例時報2069号150頁

取締役の解任事由は原則として当該取締役が取締役に就任した以後に存在するものでなければならないとして、取締役に選任される以前、かつて同社の代表取締役であった当時の不正行為を解任事由とする解任請求が棄却されました。

宮崎地裁平成22年9月3日判決・判例時報2094号140頁

再任取締役の現在の任期前に発生・判明した取締役解任の事由は、再任の株主総会で取締役としての適格が認められているから、再任取締役の解任事由とすることはできないとされました。