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株主総会決議の瑕疵

株主総会の決議に手続上または内容上の瑕疵がある場合には、そのような決議は違法な決議であって、その決議の効力をそのまま認めることはできません。

しかし、違法が有効かどうかは会社・株主・取締役等多数の者の利害に影響を与えるので、これを一般原則による処理にゆだねることは法的安定性を害し妥当ではなく、法律関係を画一的に確定し、瑕疵の主張をできるだけ制限することが望ましく、会社法では、決議の取消しの訴え(831条)と決議の不存在・無効確認の訴え(830条)が規定されています。

総会決議の瑕疵を攻撃する訴訟は、中小企業において経営支配から排除された少数株主により提起され、原告の真の意図は勝訴判決を得ることではなくて和解(多数派への株式の売却による投下資本の回収等)にもっていくことである場合が多く、決議の瑕疵を攻撃する訴訟がこうした目的で利用されることは、経営から排除され苦境に陥った閉鎖型のタイプの会社の少数株主にとって止むを得ない行為であることが多いから、裁判所は当事者の真意を汲んで和解を勧める等、適切に対処する必要があるとの指摘もあるところです(江頭憲治郎「会社法第7版」366頁)。

決議取消しの訴え

取消し事由

決議取消しの訴えの事由は次のとおりです(831条1項)。

  1. 招集手続または決議方法の法令・定款違反または著しい不公正
  2. 決議内容の定款違反
  3. 特別利害関係人が議決権を行使した結果著しく不当な決議がされたとき

提訴権者(原告適格)

株主等(取締役・監査役・清算人)に限られます。

提訴期間

決議の日から3か月以内に限られます。

被告

被告は会社です(834条17号)。

裁量棄却

決議に取消事由がある場合であっても、取消事由が招集手続または決議方法の法令・定款違反という手続上の瑕疵にすぎない場合には、裁判所は、①その違反する事実が重大でなく、かつ、②決議の結果に影響を及ぼさないと認めるならば、取消しの請求を棄却することができます(831条2項)。

決議不存在確認・決議無効確認の訴え

決議が存在しない場合または決議の内容が法令に違反する場合には、不存在または無効確認を求める正当な利益があるかぎり、誰でも、いつでも、不存在または無効確認の訴えを提起することができます(830条1項、2号)。

共通する事項

専属管轄

会社の本店の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属します(835条)。

担保提供命令

裁判所は、被告の申立てにより、原告に対し、相当の担保を立てるべきことを命じることができます(836条1項、3項)。

弁論等の併合

訴訟が数個同時に係属するときは、その弁論および裁判は、併合してしなければなりません(837条)。

敗訴原告の賠償責任

原告が敗訴した場合において、原告に悪意または重大な過失があったときは、原告は、被告に対し、連帯して損害を賠償する責任を負います(846条)。