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取締役会決議の瑕疵

取締役会決議の存在していないのに存在するかのような外観がある場合、取締役会の決議に招集手続や決議方法等の手続面での瑕疵や決議内容の違法がある場合、これを正す方法はあるのでしょうか?

取締役会の決議の内容・手続に瑕疵がある場合については、株主総会の場合と異なり、特別の訴えの制度は設けられていませんが、実務上、その決議に利害関係のある者は、会社に対し、取締役会決議不存在確認の訴えや取締役会決議無効確認の訴えを提起できるものとされています。

もっとも、①軽微な手続上の瑕疵により決議が当然に無効となるわけではありませんし、②無効な決議に基づく代表取締役等の行為が当然に無効となるわけでもありません。

瑕疵があるとして争われた事例

最高裁昭和44年3月28日判決・民集23巻3号645頁

代表取締役の解任に関する取締役会の決議につき、その代表取締役は特別利害関係人にあたるとして、同人を排除してなされた解職決議を有効とされました。

東京地裁平成7年9月20日判決・判例時報1572号131頁

取締役会決議につき特別利害関係を有する代表取締役が取締役会の議長として議事を主宰し、その進行にあたったことは決議の無効事由となるとされました。

最高裁平成21年4月17日判決・民集63巻4号535頁

株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合、取締役会の決議を経ていないことを理由とする取引の無効は、原則として会社のみが主張することができ、会社以外の者は、当該会社の取締役会が無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り、これを主張することはできないと解するのが相当であるとされました。

東京地裁平成22年1月18日判決・判例時報2081号137頁

学校法人に内紛が存在する状況下においてされた理事を解任するとの理事会決議は無効であるが、無効確認の訴えの利益が否定されました。

決議結果への影響

最高裁昭和44年12月2日判決・民集23巻12号2396頁

取締役会の開催にあたり、取締役の一部の者に対する招集通知を欠くことにより、その招集手続に瑕疵があるときは、特段の事情のないかぎり、同瑕疵のある招集手続に基づいて開かれた取締役会の決議は無効になると解すべきであるが、この場合においても、その取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるときは、右の瑕疵は決議の効力に影響がないものとして、決議は有効になると解するのが相当であるとされました。

東京地裁平成22年6月24日判決・判例時報2090号137頁

真の株主でない者を株主として行われた株主総会決議および招集手続等を欠く取締役会の決議の各不存在が確認されました。

東京地裁平成29年4月13日判決・金融商事判例1535号56頁

取締役会の招集通知は、各取締役に到達することを要するものと解されるところ、招集通知が各取締役に到達したというためには、当該取締役の了知可能な状態に置かれること(いわゆる支配圏内に置かれること)は要するものと解されるところ、本件において、電子メールが原告に割り当てられたアドレスにかかるメールサーバに記録されたことをもって原告の了知可能な状態に置かれた(支配圏内に置かれた)ということはできないから、本件の取締役会について原告に対する招集通知がされたということはできず、その招集手続に法令違反の瑕疵があるというべきであるとしつつも、本件では、原告が本件取締役会に出席してもなお本件の決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるというべきであるとし、当該決議は有効とされました(控訴審:東京高裁平成29年11月15日判決・金融商事判例1535号63頁も同旨)。

東京高裁平成30年10月17日判決・金融商事判例1557号42頁

取締役が3名で1人株主の株式会社において、取締役2名が固い決意をもって残りの取締役1名の影響力を排除しようと考え、当該取締役に対する招集通知を行わずに通知を欠く取締役の意に反する内容の取締役会決議をした場合であっても、通知を欠く取締役が1人株主の配偶者であって1人株主の意思決定に強い影響力を有するときには、通知を欠く取締役が出席してもなお決議の結果に影響がないと認めるべき特段の事情があるとはいえず、取締役会決議は招集手続の瑕疵があるものとして無効であるとされました。