保証・担保の徴求

 支払が滞った場合でも保証人や担保があると回収の可能性が高まります。保証や担保を取得することは大変ですが、①取引を開始するとき、②取引額を増加させるとき、③取引先から支払猶予の要請があったときなど、保証や担保を求めることも検討してください。ここでは、保証や担保にどのようなものがあるか説明しましょう。

1 保証

 取引先が会社である場合、会社の買掛金を会社の社長が支払う義務を負うことは原則としてありません。会社に対する売掛金を社長に請求することは法律上できないのです。

 個人に請求するためには、保証人や連帯保証人になってもらう必要があります。基本契約書を作成する場合には、できるだけ社長個人に連帯保証人になってもらいましょう。

 また、支払猶予を要請されたなら、社長はもとより専務などの関係者にも連帯保証人になるよう要請しましょう。ただし、資力のある人になってもらわないと意味がありません。

 保証には、保証と連帯保証があります。この違いは、保証人には催告の抗弁権(民法452条)と検索の抗弁権(民法453条)があることです。催告の抗弁権とは、保証人が「自分に請求する前に主債務者に請求してくれ」という権利であり、検索の抗弁権とは、保証人が「主債務者が弁済できるのだから、まず主債務者の財産に執行してくれ」という権利です。単なる保証人にはこのような抗弁権がありますので、保証人になってもらうなら連帯保証人になってもらってください。

2 担保

 担保を取得することができれば回収可能性はぐんと高くなります。そこで、担保にはどのような種類があるのかご説明しましょう。

①留置権

 留置権とは、他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権を有するとき、その債権の弁済を受けるまで、その物を自らのもとに留置する権利です。例えば、物の修理代金を支払ってくれるまで、修理した物を留置することができます。

②先取特権

 先取特権とは、法律の定めにより、債務者との合意がなくても、債務者の一定の財産から他の債権者に優先して自己の債権を回収することのできる権利です。債権回収で利用されるものでは動産売買の先取特権があります。これは、動産の売主は、目的物を買主に引き渡した後であっても、買主の手元にある動産に先取特権を有しているというものです。

③質権

 質権とは、債権者がその債権の担保として債務者などから受け取った物を占有し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることができるという権利です。

④(根)抵当権

 抵当権とは、担保となる物の占有を抵当権者に移転させずに担保権を設定するというものです。不動産の抵当権設定が最も一般的であり、銀行借入の際には抵当権設定を求められることが多いでしょう。抵当権は特定の債権を担保するものですので、継続的な取引においては、根抵当権を利用する必要があります。

⑤譲渡担保

 形式的には所有権を移転するものの、実質的には担保の趣旨であるものです。流動物譲渡担保や集合金銭債権の譲渡担保などもあります。

⑥所有権留保

 所有権留保とは、例えば、動産売買で買主が代金を完済するまで売主が目的物件の所有権を自己に保留するというものです。

⑥担保的機能を有するもの

 その他、担保ではありませんが、担保的機能を持つものとして、相殺、代理受領、振込指定などがあります。

 

債権回収のためには状況にあわせて保証人や担保を徴求するように心がけてください。