強制執行・担保権の実行

 相手方に財産があれば、判決や公正証書などに基づいて強制執行したり、仮差押により財産を保全することができます。また、担保を取得しておれば担保権を実行することにより債権を回収することができます。どのような財産に強制執行することができるか整理してみましょう。

1 不動産(土地・建物)

 仮差押の場合は裁判所の仮差押決定により対象不動産に仮差押の登記がなされて保全されます。判決などがあれば差押により競売手続が行われて売却、配当がなされます。

 不動産に抵当権を取得しておれば抵当権を実行して競売により売却されます。

2 債権

①売掛金

 相手方の売掛金が判明しておれば、その売掛金を差押、仮差押することができます。誰に対してどのような債権を有しているのか判明していることが必要です。

②預金

 相手方の取引銀行・支店が判明しておれば、その預金を差押、仮差押することができます。支店名まで判明しておれば可能です。ただし、事前に預金残高を知ることはできませんので、預金残高が少なかったため差押、仮差押したものの回収できないという事態もありえますので、どの銀行預金を差し押さえるのか慎重に決める必要があります。

③敷金

 相手方の事務所、店舗が賃貸物件である場合、家主に敷金を差し入れていると思われますので、この敷金を差し押さえることも考えられます。しかし、敷金は借主の退去、明け渡し完了まで返還されず、しかも未払賃料や原状回復費用が差し引かれますので、実効性は少ないものと思われます。

3 動産

①現金

 相手方の事務所などに現金がある可能性があるなら、動産執行により現金を差し押さえることができます。現金商売をしているのなら検討すべきです。当事務所でも、パチンコ店の営業終了間際に現金を差押え回収した事例があります。

②機械・コンピュータなど

 相手方が事業に使用している機械類は、換価価値はなくても、差押により事業を継続することが困難となるなら、相手方が任意に支払ってくる可能性もあります。当事務所でも、コンピュータを差し押さえたところ、全額支払ってきた事例があります。

③商品

 相手方が商品を所有しているのなら、当然、その差押も検討すべきです。ただし、商品の内容によっては、換価困難であり、ほとんど回収できないこともありますので、換価できるのか事前の調査が重要です。

4 自動車

 相手方が自動車を所有しておれば、その自動車の差押も検討すべきです。その場合、陸運局で登録事項証明書を取り寄せて、所有名義を確認する必要があります。リースの場合はリース会社、割賦販売の場合はローン会社などの名義になっていますので、このような場合には差押できません。

 また、自動車を差し押さえるためには、その自動車が存在する現場で差し押さえる必要がありますので、所在場所が判明している必要があります。