平常時の債権管理

 債権を確実に回収するためには、平常時からの管理が重要です。以下、平常時にどのような準備をしておくべきかご説明しましょう。

1 債権及び債務の残高、期日の管理

 貴社の取引先に対する売掛金の残高を把握するとともに、支払期日もきちんと管理しておきましょう。支払期日に支払がなければ、速やかな対応が必要です。

 また、貴社が取引先に対して債務を負っていれば、売掛金の支払いがないときに相殺することができますので、これも把握しておく必要があります。

2 債権証書、担保・保証に関する書類の管理

 取引先毎に、基本契約書、担保・保証に関する書類を整理して管理し、緊急の際には直ちに取り出せるようにしておきましょう。

3 与信限度の設定・管理

 売掛金が発生するということは、取引先に信用を供与するということです。支払期日が1ヶ月先なら1ヶ月分の、2ヶ月先なら2ヶ月分の売掛金が発生し、取引先が倒産でもしようものなら、1ヶ月分、2ヶ月分の売掛金が回収できなくなってしまうのです。したがって、「この取引先に販売する金額の上限は○○円とする」というように与信限度額を設定し、その限度額を超えないように管理する必要があるのです。

4 時効の管理

 売掛金の支払がないまま放置すると消滅時効にかかって回収できなくなります。そこで、未回収の売掛金については、いつ消滅時効にかかるのか管理する必要があります。

 商行為によって生じた債権の消滅時効は5年とされていますが(商法522条)、民法で短期消滅時効が規定されていますので注意が必要です。

(民法で定められている短期消滅時効の具体例)

①医師、助産婦又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権  3年

②工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権  3年

③生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は商品の代価に係る債権 2年

④自己の技能を用い、注文を受けて、物を製作し又は自己の仕事場で他人のために仕事をすることを業とする者の仕事に関する債権 2年

⑤運送費に係る債権  1年

 

 なお、請求書さえ送れば何回でも消滅時効が中断すると誤解されている方がいらっしゃいますので注意が必要です。消滅時効完成間際に請求をすれば、いったん消滅時効が中断しますが、6ヶ月以内に訴訟提起などをしないと消滅時効の中断の効果が生じないのです(民法153条)。